<第51回日本栄養改善学会学術総会>
マーケティング理論を用いた事業所給食の戦略と実践

平成16年10月20日〜22日
メイン会場:石川県立音楽堂コンサートホール
田中浩子・藤原早和子・澤田好宏・赤松利恵・小切間美保

平成14年入学生から新カリキュラムが導入され、従来の「給食管理」は、「給食経営管理論」となりました。
これまでのような喫食者の栄養管理とともに、マーケティングやマネジメント、アカウンティングなどの経営手法を取り入れ、経営感覚を持った栄養士が期待されています。 これまで事業所給食におけるマーケティングの実践は、利用者の嗜好調査や残食調査などのようなマーケティングリサーチのみであり、 マーケティング概念全体をとらえていないように思われます。利用者、給食運営組織、栄養士の三者が、ともに満足する関係を構築していくために、マーケティング理論を給食現場でどのように活用し、経営戦略を策定していくかが課題となります。

百貨店の社員食堂での取り組みについて事例報告をいたします。
食堂の営業状況は下記のようになっています。

■期間 2002年6月〜2004年4月
■施設

京都市下京区 百貨店社員食堂

■営業日数 元旦を除く毎日
■営業時間 AM11:15〜PM15:15
■利用者数 1,800名〜2,200名
■座席数 320席
■運営 委託方式
■メニュー構成 アラカルト方式
■目的
利用者の顧客満足度アップ、経営収支の好転
■方法 受託給食社内に管理栄養士3名を中心にプロジェクトチームを結成
マーケティングミックスの手法を用いて戦略を策定し実践

今回は利用者の顧客満足度をアップさせ経営収支の好転を目的として、受託給食会社内に管理栄養士3名を中心にプロジェクトチームを結成し、マーケティングミックスの手法を用いて、戦略を策定し実践致しました。
戦略とは組織の将来像とそれを達成するための道筋です。


■利用者 メニューが変りばえしない
味が不安定
■委託会社

外食と比較して値段が変らない

■受託給食 2001年下期より客単価が低下
■管理栄養士 麺類・丼など単品買いが多い

マーケティングの手法には多くの種類ありますが、それらを「製品( Product)」・「価格(Price)」・「流通チャネル(Place)」・「プロモーション(Promotion)」にまとめたものが、マーケティングミックスの4Pと呼ばれるものです。
 
栄養士がコントロール可能な事柄を4Pで整理したのものが下記です。

製品計画(product)
●日常の食事としての味付け
●メニューのバラエティー
●適温・適量提供・器の大きさ

価格政策(price)
●各製品の価格を下げる
●関連販売(飲み物・デザート)

流通・場(place)
●オペレーション 待たせない、レジ渋滞、見やすさ、取りやすさ
●クレーム対応

プロモーション(promotion)
●イベントメニュー、組み合わせ定食        
●POPの活用、ボリューム陳列
●にぎやかし

                  

この中で、特に重要なところを説明します。
アラカルト方式で運営していますので、主菜を毎日6種類ほど出しています。
主菜に関して、味や調理法で変化をつけることは多くの給食施設でも行っておられると思いますが、
●小鉢のメニューも7割ほど、毎日変えるようにしました。
また、最近の外食・中食を見ておりますと少しずついろいろなものを食べるという傾向がありますので、
●1つの小鉢の量を減らし、
価格も下げました。
また、これまで喫茶部門で取り扱っていた  
●飲物やデザート類を、食堂にも取り揃え、関連販売を促しました。

  

通常マーケティングにおける4PのPlaceは「流通経路」を意味します。
給食管理の場合は使用食材の安全性の確保のため、食品の産地や流通経路を把握しておくことが求められますが、今回のプロジェクトでは Placeを食事を提供し、食事をする『場』(ば)と捉え、食事環境を整えることに重点をおきました。
プロモーションにあるボリューム陳列とは、スーパーなどで見られる洗剤やビールなどを大量に積み上げる手法を応用したものです。 通常は10個前後ならべているものを30〜50個ならべ、POP を付け、声かけをすることにより、販売を促進します。
 

  

次に管理栄養士によるフロアマネジャー制の導入について説明します。
給食管理における栄養士の主な仕事は、献立作成・衛生管理など主に商品が出来上がるまでの利用者に見えないカウンター内での仕事が多いのですが、外食産業におけるフロアマネジャーのような 
●食事環境の整備
●商品の説明
●利用者の要望やクレームに対応の業務
●フロアスタッフの教育
なども、給食全体をマネジメントするものとして重要な業務と考えました。
 
カウンターの外で利用者と直に接するフロア専属の管理栄養士を配置し、利用者の食生活に関する不安や疑問に答えるようにしました。

   

まとめとしまして、このようなマーケティング手法の4Pを検討し、これに基づき運営戦略を立て全スタッフと実践した結果、客単価および買い上げ点数において増加傾向がみられました。
 
また、今回の戦略および実践において管理栄養士が積極的に関わったことにより経営収支の好転だけでなく、利用者の副菜などの購入点数が増加したことから健康増進も考慮して進められたと考えます。



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